「無知の知」をご存じでしょうか。これはいわゆる哲学の用語です。学者であるソクラテスの発言をきっかけとして現在にまで浸透しているものです。
大学時代などに哲学の講義を取っていた方は、聞いたことがあるかもしれません。この記事では、そんな「無知の知」について解説していきたいと思います。
はたして「無知の知」とは、どのような意味の用語なのでしょうか。
哲学に興味がある方は、この機会に哲学の道へ入り込んでみてはいかがでしょうか。
それでは、早速「無知の知」の意味について解説します。
無知の知は無知であることを知っているということ
ソクラテスは、様々な知恵者の人物との会話をしていて、自分の知識はまだまだ完全ではないが、しかし知らないことがある=無知であるということを知っているので、知恵者を自称している人よりは少し優れていると考えました。
知恵者と自称している人は自分が完全であると自称しているということです。そのため、そうはいっても知恵者にもきっと何らかの知らない知識があったり、考え不足があることを考えれば、ソクラテスは知らないということに自信があるため自分の弱点を認めています。
知らないことを知らないということができる勇気こそが、無知の知というわけですね。
この言葉は、日常で相手と会話している中で会話に取り入れるようなものではありません。
「あなたの話を聞いて思ったが、あなたと較べると私はまさに“無知の知”だ」などと言ってしまったら、100%怒りを買います。相手を下に見ているということになるためです。
しかし、相手が知らないことを知ったかぶっている、または知っていると思っているけれどそれほど詳しいわけではなく穴があると感じたときは、まさに「無知の知」が当てはまります。心の中でそう思うのは自由です。
ソクラテスはギリシャの哲学者
ソクラテスは、古代ギリシャの哲学者です。紀元前469年から399年頃まで生きたとされていて、彼自身は一切書物を残しておらず、その思想はすべて弟子などによって記されたものとなっています。
若い時期は兵士として戦争に参加したソクラテスですが、晩年は現在も知られる哲学者として活躍しました。
彼は様々な知恵者、賢人と対話をしていくうちに、大勢の人から恨まれるようになっていきました。そして彼に影響された若者達がソクラテスの真似をしていったことによって、さらにソクラテスへの恨みは増幅されていきました。
最終的にソクラテスは裁判にかけられ、死刑となってしまいます。逃げるきっかけがたくさんあったものの彼は逃げずにそのまま死を選びました。
無知の知は矛盾しているという説がある
さて、そんなソクラテスの無知の知は、度々矛盾していると言われます。
それは、「俺は無知であることを知っている」と言ったときに相手が「私も無知であることを知っている」と返されたらどうするのか、ということです。
しかし、これは矛盾ではありません。なぜなら、ソクラテスは様々な人と対話していくうちに「無知であることを知っているから自分は相手よりも上だ」と思っただけであり、会話中に相手に聞くというシチュエーションにはなり得ないからです。
もちろん、会話中にこの質問をしていたとしたらきっと相手は何らかのもっともらしい答えをしてきたでしょう。しかし、この質問をかわしたらそれ自体がソクラテスにとっては相手の知恵者ぶりを疑わせる結果につながったでしょう。
無知の知について詳しく知ることができる資料
無知の知やソクラテスについて詳しく知るには、哲学に関する本を読むことが確実です。
哲学の本は、図書館や全国の書店で購入できます。ネットショップでも、もちろん購入可能です。ここでは、Amazonで手軽に購入できるものを紹介します。
ソクラテスが法廷で弁明した話や死の迫るさなかに獄中で友人であるクリトンと会話した内容が記されている、彼の弟子のプラトンによる『ソクラテスの弁明・クリトン』は、岩波書店から岩波文庫で発売されています。
ソクラテスについてより近いところから知っていきたい方には、この本がおすすめです。無知の知についても、この本を読めばより詳しく知ることができるでしょう。
ちくま学芸文庫の『増補 ソクラテス』は、西洋哲学の入門に最適な本です。少し難しい本ですが、こちらもおすすめです。
F.M.コーンフォードの『ソクラテス以前以後』は、ソクラテスやプラトン、そしてアリストテレスについて詳しく知ることができる本です。哲学というものの意義についても、この本を読めば知ることができます。こちらも岩波文庫から出版されています。
岩波新書の『ソクラテス』もまた、ソクラテスを知るにあたって重要な本です。1957年に出版された本ですが、こちらも現在新品で購入可能です。
この他にも、様々なソクラテス関連書籍が販売されています。様々な本を読めば、よりソクラテスという人物について知ることができるでしょう。