日本語にはいろいろな語呂合わせで言葉を覚える習慣があります。
「なくようぐいす 平安京」「いいくにつくろう 鎌倉幕府」一度は耳にしたり、意味を習ったりしたのではないでしょうか。
それでは、「にしむくさむらい しょうのつき」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。
歴史や暗記する元素記号などではなく、言ってしまえばおばあちゃんの知恵袋として民間に伝わる語呂合わせ。
覚えておいて損は無く、きっと後々に役立ってくること請け合いですよ!
西向く侍 小の月
読みは上にも記したとおり、「にしむくさむらい しょうのつき」。
これは暦上、31日まで日数がない月を覚えるために出来た語呂合わせです。
「に」「し」「む」「く」で2月、4月、6月、9月。
「さむらい」は11月、「しょうのつき」は数字が少ない、小である月だと、語呂良く覚えるための言葉です。
なぜ「さむらい」が11月?というと、11は漢字で「十一」縦並びで書くと「士」の字になります。
この「士」は武士の「士」でもあり、そこから転じて「侍」となったようです。
その言葉の成り立ちを覚えるのが面倒であれば侍=11月と安易に覚えてしまっても問題はないでしょう。
現に「にしむく11」と覚えてしまっている人もいらっしゃるようで、しかし日本語として変だな、と思うとやはり「にしむくさむらい」に落ち着いてしまうようです。
西暦の暦と日本への浸透
そもそも現在使われている1~12月は西暦の暦であり、日本には明治5年から導入されました。
それまでの天保暦、太陰太陽暦からグレゴリオ暦、太陽暦へ移行し、完全に日常生活に普及したのは第二次世界大戦のあとになります。
もともとは太陽の昇り沈みで生活していた日本人にとって、西洋式の時計は勿論、暦、カレンダーも馴染みは薄く、浸透するまでにはとても時間がかかったとされています。
西向く侍は関西以外で通じない?
「にしむくさむらい」ときいてピンと来た人は、この記事の最初の語り口で、え~学校で習ったことだよ~と思ったかもしれませんが、それは関西や近畿圏限定です。
一部地域では「にしむくさむらい」と聞いて、いったい何のことだろう?となる人が殆どです。
関西以外では通じないのか、と言われれば千葉や静岡の方が知っていたりと知っている地域、知らない地域はまばらのようです。
一説では地域柄ではなく特定の年代の人によって左右されるなど諸説あるようです。
では「にしむくさむらい」で覚えない地域は、どのようにして31日まで無い月を簡単に覚えるかというと握りこぶしを数えます。
ぎゅっとこぶしを握ってみて、端から、拳の山になっている部分は31日まである月、谷になっている部分は31日まで無い月、として数えます。
どちらの覚え方にしても自分が小さなころから馴染んで覚えた方法が記憶に残りやすいので、それぞれどちらで覚えてもよいでしょう。
日本は狭い島国であり、同一の日本語を操りながら、全く異なる地域性を有し、時には同じ日本でなぜこんなに言葉の操り方が違うのか!と思ってしまうことも間々あります。
今回の「にしむくさむらい」と「拳」の例はとても良い日本らしさが現れているとは思いませんか?
古くから互いの文化を認めて、多く干渉せず尊重しあって残ってきたものが今にも伝わっているというのはとても素晴らしいことです。
どちらを伝えてゆくにせよ、双方の覚え方と、その違いを覚えてゆくのもまた楽しいかもしれません。